言い合いの勢いに任せて、あの時言えなかった言葉を言ってしまうところだった。
慌てて口を両手で塞いで後ろに下がると看板に躓き転びそうになる。
それを奴が咄嗟に私の腰に手を回して支えてくれていた。
「おっとあぶね!大丈夫か?」
さっきまでからかってたくせにこういう時にいきなり優しくなる。
それはズルいよ。
少し触れられるだけで体が熱く、鼓動が速くなる。
腰を支えられて近くなった距離を離そうと奴の胸を思いっきり押し返した。
「と、とにかく来ないでよね…!」
最後の止めとしてもう一回言って、家まで全速力で走った。
玄関のドアに寄り掛かりながらその場に座り込む。
「…あぁ、もう。どうしてこううまくいかないのよ…っ!」
ここ最近ずっとあいつのペースにのまれている気がする。
飲み込まれる前に回避できているけど、さっきのはほんとに危なかった。
でももしさっき言っていたらどうなっていただろうか。
なんてすぐに考えてしまうのをやめたくて、その考えを振り落とすように首を横に振った。



