私はお父さんとお母さんの約束した場所でもあり
マスターと誓った”あの場所”に来ていた





マスターと誓い合った時は冬


あの時には咲いていなかったスターチスが
今は綺麗に咲き誇り公園を鮮やかに彩っていた





「マスターはどうしてるのかな?」



私はスターチスに語りかける



(ここに来るのは辞めよう。ごめんね…お母さん、お父さん…さよなら…マスター…)






「…麻耶ちゃん?」




後ろから懐かしい声が聞こえる




「……マスター…」




「久しぶりだね。半年ぶり?」




「お久しぶりです…。どうして…ここにいるの?」



私達は立ったまま話をする




あのベンチには座らなかった
いや、座ることがてがきなかった




「麻耶ちゃんこそどうして?」



「…結婚前にケジメをつけに来たんです」



私は力強く答えた




「……ッ。結婚するんだね。おめでとう。
俺も今は絵里との式の準備で大忙しだよ」





「……ッ。おめでとうございます」




私はお祝いの言葉を伝えるだけで精いっぱいだった






「俺は…ッ。麻耶ちゃんが好きだよ」




「……ッ」




「自分の想いを伝えて自分の中でケジメをつけようと思ったんだ…だから麻耶ちゃんと誓ったこの公園に来た」




マスターがこの場所に来た理由も
私と同じものだった




「私も……」



「今日で麻耶ちゃんを想うのも最後にする」




私は頷くことしかできない




「私、もう行きますね。これ以上…マスターと一緒に居たら辛くなる…ッ…」


「うん…」


私は涙をこらえて笑顔でマスターの顔をみる



「マスター、今までありがとうございました」



「俺の方こそ、今までありがとう」


マスターは最後に優しく微笑んだ




マスターは絵里さんの待つ家に
私は勇樹が待つ家に


私達はお互い振り返ることなく公園を後にした