静岡から帰ってきた日を境に
勇樹は休日一人で出かけるようになった




行き先を聞いても「ちょっと用事を足してくる」って言うだけだった



そんな日々が続き3ヶ月
6月になりスターチスが綺麗に咲く季節になっていた



『statice』を去ってから勇樹との間に結婚の話は一度も出ていない



私の覚悟が足りなかったみたいで
心のどこかでホットしている自分がいた


そんなある日の夕方



私は食事を終えてリビングのソファーでくつろいでいたら勇樹が隣に座って来た



「ねぇ、麻耶そろそろ結婚しない?」


勇樹は私の顔をじっと見つめる


「あれからしばらく経つし、そろそろ……」


「…………うん」
(もう勇樹を不安にさせちゃダメだ)


私はコクンと頷いた



「急なんだけど結婚式は7月にやらないか?」


「えッ…準備だってあるし…いくらなんでも、急すぎるよ…間に合わないと思うし…」


「実は式場は抑えてあるんだ…黙っててごめんな」



「………」
(勇樹が休日に一人で出かけていた理由ってこれだったんだ…)



「明日から式の打ち合わせに行ってくれないか?」


私の目の前にパンフレットを差し出す勇樹


「分かった…」




ひにくにもそこは春から夏にかけてスターチスが綺麗に咲き誇る事で有名で人気な式場だった



「ある程度の事は俺の方でもう打ち合わせしてるんだけど、ドレスだったりメイクだったりそこら辺の打ち合わせを頼む…」