「今朝、意識を失ってる絵里が部屋から見つかったんだ…近くには大量の市販薬の空き箱とこの押し花だけが置かれてあった」


マスターは力なく握っていた紫色の押し花に目を落とした



「……」

(私のせいで…絵里さんを…追い詰めたんだ…)





私は何も話す事ができずにマスターの話を聞く事しか出来なかった






「ねぇ、麻耶ちゃん。知ってる?」





マスターは微笑みながら私を見る




「麻耶ちゃんの存在って凄いんだよ…人を笑顔にする力を持ってる」





マスターの優しさが心に染みる




「……そんなことない…今の私は最低で…人を傷つけてばっかり…
勇樹のことも…絵里さんも……マスターだって…全部……私ッ…………」





私の言葉はマスターの唇によって遮られた



(マスターとの初めてのキス…
こんな形でしたくなかった…)




お互いの唇が名残惜しく離れる



マスターはギュッと私を抱きしめてくれた






「麻耶ちゃんが悪いんじゃない。
誰も悪くないんだ。
だからそんなふうに考えないで」



「だって…私…」





私の目から涙が溢れた




「言ったでしょ?
麻耶ちゃんの存在が俺を救ってくれた」




「……ッ…」
(なんでだろ…いつも私を救ってくれるのはマスターの言葉…)






「俺、麻耶ちゃんが好きだよ。
一番大切に思ってる……でも…」



マスターの腕に力がこもる




「私もマスターが好き…
だけどッ…私達は結ばれちゃいけないんだよ…」




「………ッ」






(きっとマスターは優しいから別れを言い出せないんだ…
私だって別れたくない…でも…)






「『statice』は今まで通り働きます。でも…契約期間が終わったら…今付き合っている彼と…結婚しようと思うの…
だからマスターは…絵里さんと…ッ」




私の目から涙が止まらない




(これでマスターとは何も無かったことにするんだ、でも……)




私は抱きしめてる腕を緩めてマスターの顔を覗き込んだ




「「………」」





私は泣いているマスターの顔を両手で包みもぅ一度キスをする





(…さようなら…)



唇が離れた私たちはお互いの顔をみることなくその場を去っていく





”変わらない愛を誓い合う”


この約束が守れぬまま私達は結ばれることが許されなかった