すでに部屋には明かりがついている




「ただいま」



「おかえり」


家に帰ってくればお決まりの言葉

”ただいま”と”おかえり”のふたつの言葉に
どこか安心感を覚える反面
どこか複雑な気持ちになる


ピローン♫




勇樹と二人でご飯を食べていると
私の携帯が鳴った




画面を見ると元職場の先輩である
深瀬さんからのメールだった




「深瀬さんからだ…」
(あんまり連絡とらないのに…何だろ?…)



ガタンッ



その瞬間
テーブルに置いてあるコップが勢いよく倒れた


「勇樹?」
「何だって?」


私が勇樹を呼ぶ声と
青ざめた勇樹の声が重なった


「え?」 

「だから深瀬からのメール何だって?」


勇樹が少し苛立ちながら
もう一度聞き直してきた



「えッ、あ…最近、彼氏とうまくやってる?
って聞かれただけだよ…」



私はメールに書かれていた文字を
そのまま読み上げた




「明日会社行ったら聞いてみるよ。
麻耶もあんな事があったし連絡取りたくないだろ…」


「うん…」


勇樹の動揺する姿に少し違和感を覚えたけど
踏み込んではいけない気がした



そして

もうあの"悪夢"に関わりたくない気持ちから
申し訳ないと思いながらも
深瀬さんのメールは
見てみないフリをした