私は真っ暗な夜道をいつもと同じ様に
マスターと肩を並べて歩いていた




「今日はいろいろごめんね…
絵里、悪い奴じゃないんだけど
気が強いところがあるから誤解されやすいんだ…」





「大丈夫です。気にしてませんから」




マスターは何度も謝ってくるから
私はふっと笑ってしまった




「やっぱり麻耶ちゃんはスターチが好きなんだね」



マスターはそっと口を開く



「はい‼︎」




「実はね…俺もスターチスが好きなんだ。
"憧れの花"でもあり"約束の花"でもあるから」




「憧れの花…?約束の花…?…ですか?…」



私はマスターの言葉が理解できず
つい聞き返してしまった



「うん」


「………」



「そぅ言えばまだ…
スターチスの花言葉を話してなかったね…」





マスターは真剣な眼差しで私を見た



「……はい…」

(さっきも絵里さんが言っていた花言葉…
どんな意味なんだろう…)




マスターの問いに小さく答えた





「スターチスの花言葉は"変わらぬ心”なんだよ…
あのお店の由来もこの花言葉にかけてあるんだ」




マスターはゆっくりと話し始める




「あのお店は親父達の愛の形なんだ」




「………」


「いつまでも変わらぬ心で親父とお袋がお互いを想い合う」



「………」


どこか羨ましそうな顔をしているマスター



「結婚記念日には毎年、必ず親父がお袋にスターチスの花をプレゼントをするんだ、お袋は笑顔で『いつもありがとう』って幸せそうに受け取る」




「………」







「お袋を笑顔にさせる親父が羨ましくてさ、
あれはまだ俺が幼稚園児だった頃かな…
俺が親父の真似をしようとしたんだ」



マスターは懐かしそうに話し続けた