「あの、絵里さんとマスターって…」
たまたま隣にいたマスターに聞いてみた
「あぁ、ただの幼なじみだよ。
あいつ一回言い始めると聞かなくて」
「そうなんですか」
私は苦笑いするしかなかった
「ねぇ麻耶ちゃん…。
俺の顔見るの嫌になった?」
「え…?」
思いもよらないマスターの言葉に
私は驚いてしまった
「昨日の事は本当にごめん。
でも俺の気持ちを聞いて欲しかったんだ」
「……ッ……」
「仕事前にごめん。
でも昨日の事、一度考えてみてくれないかな?…」
ホールで開店準備をしている絵里さんからは
厨房にいる私とマスターの会話は聞こえない
「………」
言葉に詰まる私に
マスターは更に続ける
「やっぱり俺…麻耶ちゃんの事、
諦められそうにない」
「………」
“「好きだ」"
昨日マスターから言われた好きの2文字が
こだまするように頭の中に響き渡る
ドキッ
私の胸がいっきに高鳴る
マスターにドキドキするあまり
絵里さんが私を睨んでいた事に
私はこの時気付いてなかったんだ
