半年が経ったある日のこと
社内で一つのミスが起こった





”商品発注ミス”





この一つのミスがこれから起こる
"悪夢”の始まりに繋がるなんて…
この時はまだ思いもしなかったんだ




ある朝いつも通りに出勤すると
珍しく藤原さんが私を呼び止めた




「大川さんっ!」




藤原さんは正社員でもアルバイトでも関係なく
新人を嫌う事で有名なおばさん





「この商品の発注したのあなたでしょ!?
数量が違うんだけど。
今、本社からクレームの電話がきたんけど、
どうしてくれるのよ」




藤原さんは商品の発注のミスを
私のミスだといきなり押しかけてきた





(この商品にこの数量…
私が発注した訳じゃないよ…
…正直に話してみようかな…
でも…藤原さんに逆らったら怖いな…
でもなぁ……)





「あの、この商品を発注したのは
私じゃありません。
他の人だと思うので確認してきますね…」



私は意を決し藤原さんに反論し
ひとまずその場から離れようとした




「何が『確認してきますね』だよ。
あなたしかいないでしょ、
新人がしそうなボンミスなんて」



「………」





「仕事もろくに出来ない新人が
偉そうにしないでくれる」




藤原さんは腕を組んだまま私を見据え怒鳴り続ける



「だいたい、本社から来たって言ったて
何一つ満足に仕事できないじゃない。
若いからってみんながみんなチヤホヤするなんて思わないで。
何の取り柄もないあんたなんかと、
どうして一緒に働かないといけないのかしら」



「………」



「最近の若い子は謝る事もしないで
逃げる事ばっかり考えて
本当嫌になっちゃうわ」






(新人のくせに…若者のくせに…って
何でそこまで悪く言われなきゃいけないの…
確かにまだ、一人前に仕事が出来るわけじゃないけど…、
身に覚えのない発注ミスを
押し付けられるなんて…嫌…)




私の中で何かが切れた




「あの、さっきもお話しした通り
私が発注した訳じゃありません。
今確認して来ます。
確認もしないまま、
新人だからっていう理由だけで
私にミスを押し付けないで下さい。」







「なッなによ!私に意見するつもり?」




藤原さんはこのお店に働き出して15年

開店当初から働いていた事もあって陰の権力者




だからお店の人たちは藤原さんの事を
”ボス猿”と呼び逆らわない様にしていた




「ホント生意気な新人ねッ、
素直に謝りなさいよッ」






私と藤原さんが言い争ってる時
水野さんが駆け寄ってきた



「藤原さん!探しましたよ、
店長と副店長のお二方から
話があるからバックヤードに来てくれないかって。
商品の発注ミスなんですけど
副店長が間違えたらしくて、、」



「あら、そうなの?」



「はい、店長にこっ酷く怒られてますよ。
副店長!(笑」




「もう副店長ったらそそっかしいんだから、、
水野くんもわざわざ呼びに来てくれて
ありがとね」




藤原さんは水野さんにお礼を言うと
笑いながらバックヤードに
足早に向かって行った





私に目をくれる事もなく
謝罪の言葉さえもなく
その場からいなくなった




水野さんの話しによると
発注ミスをしたのは副店長で

発注作業をしている途中に
来客対応に追われて確認をしないまま
期日に追われ慌てて手配をしたらしい


注文数を二桁間違えたまま
直接本社にデータを送ってしまった為
店長と本社の人に怒られている最中みたい






「大川、大丈夫かぁ?」




その場に立ち尽くしている私に
水野さんは優しく話かけてくれた





「…えっ…あ…水野さん…ありがとうございます…」





「え?何が?
俺はただ店長の頼まれ事をしに来ただけだよ」




「…すいません…」




「あ、でも一つだけ言うなら、
あんまり気にしない方がいいよ。
社会に出たら学生時代とは違って
いろんな人がいるから」




「はい…」


私は力なく笑うしかなかった