「沙織のその顔みれてよかった」

「え?」

「いや、朝さ、俺のせいで嫌な思いしたかなって思ってて。暗い表情だったから」

「あ・・・ごめんなさい」

「沙織が謝ることじゃないよ。俺こそ嬉しくて手振っちゃって、なんも考えてなくて反省した」

「わたし強くなりますから」

「・・・え?」

「先輩の隣に並んでも恥じないようになりますから。だから先輩は気にしないでください」

「そういうところ────」


ププー!

先輩の言葉と車のクラクションが重なってなんていったのか聞こえなかった。

でもまた。先輩は少し悲しそうに笑う。

その顔がいつまでも頭から抜けなかった。