「沙織!危ない!」

青信号で渡ろうとしたところに一台の車が信号無視をして飛び出してきた。

とっさに沙織の手をひき、その身代わりになるように俺は車と接触した。


・・・


気付いたらなにもない黒い部屋にいた。

なにも先がみえずに広がるこの空間は恐ろしい。


「俺は・・死んだのか?」

そう呟いても誰も返事をしてくれない。

でも現実世界ではありえないこの空間は、もう俺は生きていないということをしめしているようだった。


「沙織・・・」

大切な人を置いてきてしまった。

きっと沙織は自分を責めているだろう。

もしかしたら自分も死のうと考えているかもしれない。

沙織は優しい子だから。

だから怖い。