「俺も本当は怖いよ」

でもふと視線をあげたら優も泣いていた。

そうだった。

一番怖いのは優だった。

「みんなに忘れられるのは怖い」

「っ、優・・」

「それでも、俺はこういう選択をした。手紙にも書いたけど、ただもう一度沙織に会いたくて」

そのまま強く抱きしめられる。

「沙織には笑っていてほしいんだ」

もう終わりが近い。

それは時計なんてみなくても、優の姿をみたらわかる。


「ねえ、沙織。笑って?」

その問いかけに、わたしは無理をしてでも笑う。

「沙織、大好きだよ・・・さよなら」

「・・・まって、いかないで・・」

その言葉もむなしく、優はキラキラと輝いたまま消えていった。

まるで海に溶けていくようだった。