「いいんだよ」

「?え?」

「沙織はそのままでいいの」

どうしてなにも言わなくても伝わるんだろう。


「・・・ありがと」

この人とずっと一緒にいられたらそれでいい。

優さえいてくれたらわたしはそれ以外なにもいらない。


そんなことを思いながら信号を渡ろうとした。

青信号だったし、全然まわりなんてみてなくて。

優のことばっかりみてて。



「沙織!危ない!」

優の焦ったような顔がみえて、そのまま腕をひかれて・・・。

ドンっ

鈍い音とともに「きゃー」という悲鳴がどこからか聞こえた。



「・・・・ゆう?ねえ・・・ゆう!!」

頭から血を流して倒れているのは、わたしの大好きな人。


いくら呼びかけても返事をしてくれなくて。

救急車のサイレンが近づいてくる。


優はそのまま目を開けることがなかった。