10日間の奇跡



「・・・沙織」

「ちょっと散歩でもしよっか」

家の中に入るのでもいいと思った。

だってもともとは優だってここに住んでいたんだから。

でももしかしたら優はそれを嫌がるかもしれないと思って。


「・・・うん」

さっきから暗い表情の優は、多分なにをいっていいのかわからないんだと思う。

それはわたしも一緒なんだけど。



だって優はあの日、事故で亡くなったんだから。



「全部思い出しちゃった」

「・・・思い出してほしくなかったんだけどな」

「夢をね、みてたの」

「・・・夢?」

「そう、でもあれは全部現実だったんだね」


今でははっきり思い出せる。