「・・・沙織」
「ちょっと散歩でもしよっか」
家の中に入るのでもいいと思った。
だってもともとは優だってここに住んでいたんだから。
でももしかしたら優はそれを嫌がるかもしれないと思って。
「・・・うん」
さっきから暗い表情の優は、多分なにをいっていいのかわからないんだと思う。
それはわたしも一緒なんだけど。
だって優はあの日、事故で亡くなったんだから。
「全部思い出しちゃった」
「・・・思い出してほしくなかったんだけどな」
「夢をね、みてたの」
「・・・夢?」
「そう、でもあれは全部現実だったんだね」
今でははっきり思い出せる。



