「おはようございます、涼くん。」

声をかけられて振り返ると
そこにいたのは咲菜だ。

顔の筋肉がひきつる。

どれだけ自分に言い聞かせても
この呼ばれ方はなかなか慣れない。

「おはよう、咲菜。」

片手をあげて応じる。

まるで、昔からずっと僕らは
こんな挨拶をしてきたのだ、
とでも言うように。

俺が反応すると咲菜は
嬉しそうにこちらにやってくる。

ふわふわとした髪が風になびき
太陽の光を受けてきらきらと光っている。

その光景に見とれつつ、
密かに深いため息を吐いた。

今日も、ダメだったのか。

朝こうしてため息をつくのが
習慣になったのはいつ頃だろうか。