春風が吹く。

桜の木がざわりと
その枝を大きく揺らした。

『涼!』

声に反応して振り返ると、
そこにいるのはいとおしい君だ。

色素の薄いふわふわとした髪に
りんごのように色付く頬。

あぁ、やっと会えた。

『咲菜。』

手を伸ばす。

もう少しで君に触れられるんだと思うと
あり得ないくらいに胸が高鳴った。

誰よりも、大好きだった。

いや、今でも...

僕は、僕を知らない君を
ただ一途に愛し続けている。