「ってそういえば私、京子と土井さんの馴れ初めとか聞いたこと無かった気がするんだけど。」

「え?気になるの?」

「そりゃ気になるでしょ。」

「話してもいいけど長くなるだろうから放課後にゆっくり、私の家で話そうよ。ついでに、遊ぼ〜!」

「了解!じゃ、うちの教室こっちだから。バイバーイ」

「じゃあね〜!」

忙しい朝が終わると昼休みまで静かな時間になる。
これは今日だからではなく毎日変わらないルーティーンのようなものだ。
まず私に声をかけるような人は、ほぼ居ない。理由?それは3つほどある。

1つ目は、私が大門寺グループの関係者だということである。
我が大門寺学園は、金持ちの集まりではあるが学園の名前からして分かるように、この学園は私の家の所有物と言っても過言ではない。その上私は跡取り娘。
つまり、私に危害が加わればその原因となるものは即刻潰される。潰されたくなきゃ波風を立てないのが1番というわけだ。だから私は周りに馴染めなくなるのだ。

2つ目は私の婚約者である江戸川さんの家が、極道として有名な江戸川組だと言うことが関わっている。とは言っても、もう極道らしいことはしていない。皆真っ当に仕事をしている。でも世間的には、まだ極道として名を残している。そのため、江戸川組の後の極妻を怒らせないように距離を置いているということなのだ

3つ目は、私が昔…

「すまんが、大門寺 光はいるか?」

私?振り返るとそこには江戸川さんがいた。

「え?どうしてここにいるんですか?」

「て、手紙を預かってな。差出人はうちの先代なんだが。」

江戸川組の先代?どうして私に?

「わざわざありがとうございます。受け取っておきます。教室まで来てもらっちゃって申し訳ないです。」

「いや、あまり気にしないでくれ。」

「分かりました。では」

「ちょ、ちょっと待て。」

「はい?どうかしました?」

「家に泊まるっていう話なんだけど明日の夕方から日曜日の昼頃までを予定してる。それでも良いか?」

明日から日曜までか。2泊ぐらいかな。

「軽い旅行みたいですね。ワクワクしちゃいます。でも荷物とかは…」

「それなら使用人に2日ほど、俺の家に泊まるといえば準備されるだろう。」

「そうですよね。分かりました。では」

「あぁ、じゃ、じゃあな。」

素っ気ないけど2日も江戸川さんの家で過ごせるんだ。楽しみだな。
あれ?でも私連絡してって言ったような。連絡先も交換してるし、忙しいはずなのにどうして直接言ってくれたんだろ。
もしかして私に会いたかったとか?まさかな。
でもやっぱ江戸川さんって威圧感あるからか怖いんだな。すごい避けられてるし、でもその分江戸川さんの優しさを皆が知ることがないからいいけど。
さて先代からの手紙でも読もうかな。

『拝啓 光様
お久しぶりでございます。お元気でしょうか?
この度は銀次が浮き浮きしているんで理由を聞いたら、泊まりにくるっていうもんだから光さんが驚いてないか心配で手紙を書きました。
でもまぁ光さんは驚くより嬉しいって感じなのかな。まぁ今回は優が話したいことがあるって言ってるので聞いてやってください。
私からも久しぶりに会って話したいことがあるので、是非我が家に来てください。
歓迎致します。
江戸川 秀 』

江戸川さんも先代も私に話?なんだろ、気になるな。

—放課後—

「光!帰ろ〜!」

「うん。あれ?京子の家に行くんだよね?」

「そうそう。光の家の運転手さん私の家わかるの?」

そういえば運転手さん変わったんだっけ?確か緑さんって言う人だったような。女の人かな?

「説明すれば、なんとかなるんじゃない?」

「ま、説明するまでも無いよね。ここら辺で1番大きいマンションの最上階だし。」

「確かに。じゃ、早く行こうか。」

「うん。」

私の家の車に歩いて行くと、見た事のある人影があった。

「え?二階堂さん?」

そ、そういえば二階堂さんの下の名前って緑だったような。

「あれ?俺が運転手になったって聞いてなかったんすか?」

「いや、緑って人が運転手になったって聞いてて、てっきり女の人かと…」

「あぁ、そうだったんですね。それでその方はお友達ですか?」

あ、京子のこと知らないのか。

「あ、はい。友達です。えっと…」

「泉 京子です。光とは仲良くさせてもらってます。あの、今日私の家に行かないといけないんですけど、私の家まで送って貰ってもいいですか?」

「分かりました。お家の場所は前の運転手さんから聞いておりますので、ご安心ください。では向かいましょうか。お2人とも乗ってください。」