家に帰ってきてすぐ、知らない番号から電話があった。

『もしもし…』

“昨日は災難だったな。”

昨日、そのキーワードですぐにわかった。

『昨日はお世話になりました。警察の方が私になんの用で…??』

これといって何かをした記憶がない。

警察のお世話になるようなことは、これっぽっちもないのだ。

“いやぁ、君に何個か質問をしたくてね。”

『質問ですか??』

“Doll makerについて。”

背筋が凍るような気がした。

忘れたいはずの記憶が今、掘り出される。

『答えられる範囲でしたら…』

そう答えるしかなかった。

“Doll makerの性別は君から見てどっちだと思う??”

質問の内容を頭が追いつかず、一つ一つを整理しながら答える。

『性別…女…でしょうか…??』

“それはなぜ?”

正直、自分で言葉にしていてもなぜそう答えたのかはわからない。

『特に理由はないのですが…』

そう答えるしかなかった。

“そっか。じゃあ次。”

『は、はい。』

次々と質問に答えていく。

“ありがとう。なんとなく解決したよ。”

ほとんどの質問が私の憶測だけで返された。

Doll makerは女で、若い。

人形が本当に大好きで、人が嫌い。

でも何故か、そう思えてしまった。

“今から会えたりするか??”

『今から…ですか…??』

急な誘いに驚きを隠せずにいた。

『大丈夫ですよ。』

特に今日は用事がない。

だから私は警察の人に会うことにした。

“じゃあ昨日の路地裏で。”

待ち合わせの場所でも、もうあそこには行きたくない。

だが待ち合わせだけと思うと、仕方がないの一言で済まされてしまった。

『なんか嫌な予感がするよぉ…』

私は空を見上げながら神を恨もうと誓った。待ち合わせ場所に着いた。

昨日の異臭はなく、いつもの路地裏だった。

『綺麗になってる。昨日のことがなかったみたい。』

そう考えていると、後ろから肩を叩かれた。

「昨日ぶりだな。」

警察の人が後ろには立っていた。

『そうですね。それで要件はなんですか?』

私が尋ねると、少し悩んだ顔をして口を開いた。

「Doll makerがまた現れた。」

現れた。

その一言で全てを理解した。

『また…犠牲者が増えたんですね…』

Doll maker。

その言葉だけで顔を顰めそうなくらい、私は敏感になってしまったのだろう。

これまで何人も殺し、自分が描き出した人形のように着飾る。

そんな人を私は恐ろしいよりも先に

『狂ってる…』

そう、口に出していた。

「お前に協力して欲しい。」

そう言われた時、私はこの人の頭がとうとうイカれたのかと思った。

『私は一般人ですよ?何もお役に立てることなんて…』

そう。私は一般人。

私にできることなどないのだ。

「お前の一般思考が俺らとは違うんだ。」

人は誰しも同じ思考ではない。

それは皆知っているはずなのに、なぜ私にそれを言ってきたのか疑問がいくつも浮かび上がる。

『まぁ…私でお役に立てるのであれば…』

この一言以外言葉が見つからなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー現場ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昨日と同じ異臭だ。

私はまた顔を顰める。

「あの方が今回の犠牲者だ。」

警察の人が見ている先には、黒のドレスを身にまとった女の人。

それはまるで

『あの人形みたい…』