「ごめんね、見送りありがとう。
迷惑をかけるけどよろしくね。
くれぐれも誰にも言わないで。
電話があっても知らないと言って。
私からの一生のお願い。」

私は振り返り言った。

「本当に大丈夫なん?本当に…」

友達のキッコが珍しく心配そうに言った。その横では馬鹿みたいに
後輩のとんちゃんが
カメラで私を撮っている。

「撮んないでよ、恥ずかしいやん」

私が涙堪えて、ムスッとした顔で見ると、

「こんな人生の門出、写しとかな。
あとで送っちゃるけ。」

低い声で不敵な笑みを見せて言うと、
またファインダー越しに私を見ている。

小倉駅のホームにボワッと
新幹線の風が吹いて、
皆の髪をくちゃくちゃにした。

高校三年の早春、まだ18歳、
ううん、もう18歳。
そして今日は卒業式の午後
私は今旅立つ為にこの駅に立っている。

そしてバックを一つ持ち、
開いたドア口に乗り込む私。

ドア口に立ち、
不安げに見る友達の顔を一人一人眺めた。

「本当ごめん…ありがとう…」

ルルル…と
心とはうらはらな快調な音がなると、
重くしっかりしたドアがピシッっしまる。

このドアの重みと切断された空気。
この瞬間、
私のレボリューションは始まった。
ほんの少しでも
私の周囲にあった温もりさえ、
私は断ち切り、
そして旅立つ。

本当にごめん…

走馬灯のように
小倉での思い出が蘇り、
私は涙が止まらなくなっていた。

本当に本当にありがとう…ごめんね…

ゆっくりと進み出した
電車のドアに張り付き、
私と一緒で涙を我慢していた友人達が
涙を拭きながら電車を追いかけて来る。

それが見えなくなった瞬間、
私はドア口に崩れ落ちて泣いた。

私は
自分で自分の幸せを掴む為に
旅立ちます。

誰かに幸せにして貰うのではなくて、
私が自分で幸せになる。

もう私はこれから
自分で自分の人生を歩いていける。
誰かに左右されるわけじゃない、
自分で作る人生…

次の駅に止まるアナウンスが流れた時、
涙を拭いた私は座席に行き、
流れ行く景色を見ながら、
次に続くハードルを思いながら
ゆっくりと眺めていた…