山田は、当番の為いつもより少し早く家を出て(5分程)学校に向かっていた。

(あ〜何で、こんな日に当番なんだよー)

山田は、微妙な早足で学校に向かっていた。
(何故かお尻をフリフリ)

学校まで、500m位の所に親友のシュン(山下俊二)が歩いていた。

山田は、シュンに声を掛けた。


「おい、シュン」

「あ〜何?」

「今日ってさぁバレンタインだよな」

「あ〜バレンタインデーだな」

(何を当たり前の事を言ってんだ)


「今年こそは、貰えるよなぁ〜」

(まぁ、リエさんはあげるだろうな)

「・・・・」

山田は、かなりテンションが上がっている。

「シュンは、いいよなぁ〜」

「?どうして」

「だってさぁ、メグミさんは勿論の事、意外に人気あるからさぁ〜」

「そうかなぁ〜」

「去年も、かなり貰えただろう」

「あ〜義理ならね〜」

「義理チョコでもいいじゃないか、俺は母ちゃんだけだったからさぁ〜」

「あ〜〜」

(可哀想なヤツ)

「でも、今年はさぁ〜」

「?今年は何?」

「まぁ、リエさんは大丈夫だと思うけど〜」

「まぁ、リエさんは山田にあげるだろう」

「うん、でもさぁ〜シュンみたいにさぁ」

「・・・俺みたいに何?」

「いや、止めとくよ虚しくなる」

「なんだよ、それ?」

「まぁ、いいよ、それじゃ、当番だから先に行くよ」


山田は、シュンにそう言って足早に学校に向かった。


山田が、3年1組の下駄箱の入り口に来た時女子3人とすれ違った。

(クンクン良い匂い)

山田は、鼻を膨らませ残り香りを嗅いでいた。


女子A「ハァ〜なんだかなぁ」

女子B「たくさん入っていたねー」

女子C「やっぱり人気あるよねー」

女子A「ハァ〜」


山田は、下駄箱の前で止まり何故か手を合わせて拝みだした。

(今年こそは有りますように〜)
「パン♪パン♪」

その山田の切実な姿を見ていたクラスメート数人が何故か山田の横に並び一斉に拝み出した。

『パン♪パン♪』

「お願いします。今年こそは入っています様に〜」

見事な合唱である。

そんな姿を女子達は首をフリフリ眺めていた。


そして、山田とクラスメート達は、お互いに顔を見合わせた。

クラスメートの誰かが声を上げた。

「せーの!」

そこにいたクラスメート達は見事なタイミングで(完璧に息が合っている)扉を開いた。

そして、中身を確認し、そこにいたクラスメート達は次の瞬間全員首をうなだれた。

『カクン↘︎』

「ハァ〜」

クラスメート達は力なく溜息をついていた。