1度だけ、『あっち』で都司の喧嘩を見たことがあるけれど、2人が戦ったら互角かもしれない。なんなら技術面では彼の方が勝っているかもしてないと思われるほど。
あっという間に終わったそれは、私が散々苦労して時間稼ぎをしたのが意味のないように感じるほどに潔く、相手にとって相当なトラウマすら植え付けてしまうのではないかと思うほどの力の差があった。
敵なのに、心配してしまうほどピクリとも動かない。
「……すいません」
顔を上げれば、綺麗な顔を歪ませた美苑がこちらを見ていた。
私に視線を合わせるようにしゃがんで、そっと頬に手を当てる。
「……遅くなって、すいませんでした」
暖かい美苑の体温が私を包む。ふわりと甘い香りが鼻を掠めて、抱きしめられているのだと気づいた。
「優香は?」
私がそう尋ねると、美苑の抱きしめる力が少し強くなった。
「……そういう人でしたね。あなたは」
よく分からないことを呟いた彼は、ふっと笑った。
「無事ですよ。恭夜と一緒です」


