家に帰ると、

「ママ、なんで彩未ちゃんのママに謝ったの?」

不満げに陽茉莉が言った。

「陽茉莉が彩未ちゃんに悪い事したから」

「…悪い事?」

陽茉莉がキョトンとしている。

「彩未ちゃんを突き飛ばしたでしょ」

「あれは彩未ちゃんがいじわるを言うから!」

「いじわる?」

「うん!
パパは陽茉莉のパパじゃないって。
苗字が違うって!」

陽茉莉の涙に、杏璃は息がつまりそうだった。

「おい、大丈夫か…?」

いつの間にか利夫(としお)が帰って来ていて、リビングの電気をつける。

「あ…おかえり」

杏璃は利夫に全てを話した。

「杏璃、やっぱり偽装結婚なんて無理だったんだよ…!
陽茉莉の為にも結婚しよう」

杏璃も今日の出来事ですっかり参ってしまい、利夫との結婚を承諾した‐。