‐翌朝

「大丈夫って何が大丈夫なのかしら」

昨日、杏璃に話し掛けたお母さんが、眉を潜める。

「ねぇ~、本当よねぇ」

他のお母さんも同調する。

「でも桜庭さん、ちょっと変わってるから」

「え、何なに?」

「夫婦別姓なんですって~!
でも離婚した野久保さんと仲良くするなんてどういうつもりかしら」

後ろから聞こえてくる話し声に、杏璃は怒りたくなる気持ちを抑えた。


「わたし、引越しするの…。
幼稚園も変わるつもり」

ある日、野久保さんが言った。

「え、どうして…?」

「夜月が父親がいないって、からかわれているらしいの…。
杏璃さん、今まで良くしてくれてありがとう」

野久保さんはペコリと頭を下げると、去って行った…。