「洸夜かっこよすぎる!!」




「言いすぎだって……」





劇が無事に終了した。




今は、乃々花と一緒に再び散策中。




その間中、ずっと俺の演技や容姿を褒めてくれる。好きな子に褒められるのは、気分も高揚して嬉しいんだが、ここまで来るとさすがに恥ずい。





さっき買ったわたあめを頬張りながら、劇の感想を止まることなく言ってくれる乃々花。俺からしたら、乃々花の方がかわいすぎるし。





もうちょっとだけでも、かわいさを抑えてもらいたい。でないと、俺が目を離した隙に奪われてしまいそうだ。だから、絶対気が抜けない。





「寧々先輩も、すっごいキレイだったなぁ……」





思い出すように呟く乃々花に、ちょっとばかり不安がよぎる。




だってさ、『白雪姫』だぞ?キスシーンがもちろんあったんだ。もちろん、実際にはしてない。角度的には、そう見えるようにしたけど。




なのに、全くそのことに触れてこないのはなぜ?単に、そのシーンがキスをする場面であることを知らない?それか、松原と俺がキスするわけがないと信じてくれてる?




乃々花の天然さには、いつも驚かされてばかりだから、気が気じゃない。彼氏がキスとかを彼女以外の女としてたら、普通にダメだろ?ましてや、彼女の目の前でとか。人として、最低だし。




乃々花の考えがわからない。正直言って、不安だ……。





「乃々花、今日って夜まで空いてる?」




「うん、空いてるよ。」




「じゃあさ、後夜祭、参加しない?よければ来てほしいんだけど。」





俺の不安を頭から取り除きたくて、話題を一気に変えた。この時間中に絶対誘っておかなくてはいけなかったことを。





星流学園の後夜祭は、基本的に参加できるのは学園生徒のみ。だが特別に、各クラス3人までは他校でも招待できる。




俺は、どうしても後夜祭で乃々花へのサプライズをしたかったから、クラスメイトに頼み込んだ。後夜祭では、冬に近いにも関わらず、花火が打ち上げられる。去年初めて冬の花火を見て、感激したんだ。




幸い、みんな(こころよ)く承諾してくれた。代わりに、乃々花をお披露目するように条件がついたけど。





乃々花は、まばたきを繰り返すだけで固まってしまった。後夜祭に参加できるとは思っていなかったんだろうけど。





「コウヤサイ……って、洸夜のお祭り?」





……なるほど。乃々花は後夜祭を知らないらしい。






「後夜祭は、この文化祭の後に学園の生徒だけでする祭り。俺が主催とかじゃない。」






「……学園の生徒だけだったら、参加できなくない?」





「乃々花は、特別優待できるから。」





「……いいの?」




「うん。乃々花、よかったら来てよ。花火とかも打ち上げられて、めっちゃキレイだから。」




「ほんと!?」





花火がよほど楽しみなのか、さっきまでの悩むような気配は消えて、キャッキャとはしゃいでいる。わかりやすすぎるよな、乃々花は。かわいくはしゃぐから、余計に困るんだよ。





「じゃあ、参加するってことでいい?」




「うん!よろしくお願いします!」