眩しい光に包まれる。





目を開ければ、先程の白い空間とは違い、真っ暗な場所にいた。





本当の、暗闇。



これまでの暗闇といえば、病室の電気を全て消した時くらい。でも、その時は街明かりが差し込んでいたから、怖くなかった。





今は違う。視界を覆われたように、何も見えない。





怖い、怖い、怖い…………!!!!





『助けて……』





小さな女の子の声が耳に届いた。





「え?」





私の他に、ここに連れてこられた人がいるの?だったら、まだ少しだけ、安心できる。






『助けて……』





今度は、低い男性の声。何人いるんだろう。





『助けて……』






今度は、女性。






『助けて……』




『助けて……』




『助けて……』






微かに届いていただけの声は、どんどん大きくなる。そして、人数も。






『助けて……』『助けて……』『助けて……』





これは何?一体、なんの冗談?





いくら声が大きくなっても、姿は見えないし、人の気配も感じない。





まるで、さっきのクロノスさんみたい。






『助けて……』『助けて……』『助けて……』





次々と聞こえる「助けて」っていう声。初めは、疑問だけだったのに、今では恐怖心しかない。






「いや、怖い。なにこれ。」






成すべき術もわからぬまま、声だけが大きく、複数になる。





やめてよ。こんな冗談。怖すぎる。








「いやいやいやいや」






どうなってるの?なんで、こんなに恐怖心を煽るの?鳥肌が立つ。





どうすれば、この気味の悪い時が終わる?








もう嫌————!!!!








『乃々花』





微かにだけど、聴き慣れた、大好きな声が響いた。





『乃々花』





またも、小さいけどはっきりと聴こえた。





「洸夜……」





『乃々花、はやく戻って来いよ。』







そうだよ。私、戻らなきゃ。洸夜がいる場所に。






いつの間にか、『助けて』っていう声は、耳に届かなくなっていた。そして同時に、眩い一筋の光が見えた。





そこに向かって、歩みを進めると、1つの真っ白な扉があった。普通だと鍵穴の場所が、なぜか丸っぽい複雑な形で、穴が空いている。




その穴には、見覚えがあった。





「私の懐中時計と一緒だ。」





懐中時計を、穴に差し込む。






ガチャ————





鍵が開くような音と一緒に、扉が開く。






そして私はまた、眩い光に包まれた。