【said 乃々花】
真っ白な空間。
そこには、私しかいない。
風もなく、音もなく、暑さも寒さもない。
「ここって、どこ?」
呟いても、何も返ってこない。なんで?
見覚えのない、未知の空間。
なんで、私はここにいるの?
疑問符が脳内を占めるけど、何も解決できない。
怖い————
不意に、そう思った。
この、本当に何もない世界に、奇妙さを感じる。その“奇妙さ”が“怖さ”を生み出しているんだろう。
『乃々花』
かすかに、突如呼ばれた私の名前。
はっとして、周りを見渡すけど、“誰”以前に、何もない。
『乃々花』
今度は、はっきりと聞こえた。
でも、それは頭の中に、直接語りかけているようで、初めての感覚。
ゾワッとした。背中の中心を、なぞられたような感じ。でも、実際には、全く触られていない。
「あの、ここはどこですか?」
『ここは、天界と地界の狭間にあり。そなたは、選ばれし者。』
天界……つまり、天国?ということは、地界は、私がいた地球のこと?
それに、選ばれし者って………私が?
一体、何に選ばれたの?
『困惑しているようだな。』
「え……あ、はい……。」
動揺が隠せない。こんな不可思議な空間で、非現実的なことが起こりすぎて………。
『まずは、自己紹介とでもいこうか。我が名は、クロノス。時の神。地界では、ギリシャ神話の中の神の1人として、存在している。』
ギリシャ神話……って、事実だったんだ。昔の方が書いた小説としか、思ってなかった。
でも、なんでそのクロノスさんが、ここに?そして、私もなんで……?
『そなたは、もうじき死ぬ運命にある者。』
死ぬ……?私が……?手術、失敗したってこと?
『だが、今なら救える。我が、そなたに生きる運命を与えればな。』
……っ!?私、生きられるの?この方に、認められれば……?
「どうすればいいですか?」
『そなたは、質問に答えれば良い。その答えによって、決めさせてもらおう。』
質問って、どんなの?この方のプラスになることを言うべきなの?でも、そんなのわからないし……。
『そなたは、生きながらえたら、何をしたい?』
生きながらえたら、私がしたいこと……。
そんなの、1つしかない……。
「普通の生活が送りたいです。病院の外に出たい。少しでも、外で過ごしてみたい。洸夜と……いろんな場所に行って、いろんな事をしたい!」
前に洸夜に言われた。「俺、乃々花の素直なところ、大好き」って。
だから、自分の想いはそのまま言う。たとえ、それで生きながらえなくても、後悔はしない。最後まで、洸夜の好きな私のままでいたい。
『そなたは素直だな。このような性格の者は、さほどいない。』
普通は、自分のことじゃなくて、周りに尽くすアピールをするべきなんだろう。でも、自分に嘘をつくのは、絶対ダメだから。
「私の、素直な気持ちです。」
偽りの心は、持たない。
『………いいだろう。そなたを、地界に返す。そして、自分の思うがままに、生きるが良い。』
「!!ありがとうございますっ!」
やった。帰れるんだ。洸夜の待つところに。
幸せすぎて、涙が溢れる。洸夜と会ってから、良くも悪くも、泣いてばっかり。でも、そんな自分も、好きでいられる。洸夜のおかげで。
『では、これを持て。』
ゆっくり、上から何かが落ちてくる。出した手に乗っかったのは、金色の懐中時計。
「これは?」
『そなたの生命の時を刻むもの。今は、針が動いていないが、そなたが地界で目を覚ます時、再び動き始める。』
私の生命……。この懐中時計に、今まで私が生きてきた証が、刻まれてるんだ。
『我ができるのは、ここまで。あとは、そなたらの力次第だ。』
「え?どういう事ですか?」
『1度ここへ送られた者は、地界に戻るために自身の懐中時計を持って行く必要がある。そして、自分でやり遂げなければならない試練もある。今からの試練は、そなたならば、すぐに成し遂げられるだろう。』
そなたら……ってことは、誰かと一緒に協力するって事?でも、ここには私しかいないし。
『最後に1つ、忠告を。そなたのように、再び生を得た者には、さらなる試練の時が幾度もある。それを解決するにあたり、必要なものは、全て“愛”。“愛”を持って生きれば、幸福がそなたに与えられるだろう。』
「……愛…。」
『健闘を祈る。さらば、桑野乃々花。』
真っ白な空間。
そこには、私しかいない。
風もなく、音もなく、暑さも寒さもない。
「ここって、どこ?」
呟いても、何も返ってこない。なんで?
見覚えのない、未知の空間。
なんで、私はここにいるの?
疑問符が脳内を占めるけど、何も解決できない。
怖い————
不意に、そう思った。
この、本当に何もない世界に、奇妙さを感じる。その“奇妙さ”が“怖さ”を生み出しているんだろう。
『乃々花』
かすかに、突如呼ばれた私の名前。
はっとして、周りを見渡すけど、“誰”以前に、何もない。
『乃々花』
今度は、はっきりと聞こえた。
でも、それは頭の中に、直接語りかけているようで、初めての感覚。
ゾワッとした。背中の中心を、なぞられたような感じ。でも、実際には、全く触られていない。
「あの、ここはどこですか?」
『ここは、天界と地界の狭間にあり。そなたは、選ばれし者。』
天界……つまり、天国?ということは、地界は、私がいた地球のこと?
それに、選ばれし者って………私が?
一体、何に選ばれたの?
『困惑しているようだな。』
「え……あ、はい……。」
動揺が隠せない。こんな不可思議な空間で、非現実的なことが起こりすぎて………。
『まずは、自己紹介とでもいこうか。我が名は、クロノス。時の神。地界では、ギリシャ神話の中の神の1人として、存在している。』
ギリシャ神話……って、事実だったんだ。昔の方が書いた小説としか、思ってなかった。
でも、なんでそのクロノスさんが、ここに?そして、私もなんで……?
『そなたは、もうじき死ぬ運命にある者。』
死ぬ……?私が……?手術、失敗したってこと?
『だが、今なら救える。我が、そなたに生きる運命を与えればな。』
……っ!?私、生きられるの?この方に、認められれば……?
「どうすればいいですか?」
『そなたは、質問に答えれば良い。その答えによって、決めさせてもらおう。』
質問って、どんなの?この方のプラスになることを言うべきなの?でも、そんなのわからないし……。
『そなたは、生きながらえたら、何をしたい?』
生きながらえたら、私がしたいこと……。
そんなの、1つしかない……。
「普通の生活が送りたいです。病院の外に出たい。少しでも、外で過ごしてみたい。洸夜と……いろんな場所に行って、いろんな事をしたい!」
前に洸夜に言われた。「俺、乃々花の素直なところ、大好き」って。
だから、自分の想いはそのまま言う。たとえ、それで生きながらえなくても、後悔はしない。最後まで、洸夜の好きな私のままでいたい。
『そなたは素直だな。このような性格の者は、さほどいない。』
普通は、自分のことじゃなくて、周りに尽くすアピールをするべきなんだろう。でも、自分に嘘をつくのは、絶対ダメだから。
「私の、素直な気持ちです。」
偽りの心は、持たない。
『………いいだろう。そなたを、地界に返す。そして、自分の思うがままに、生きるが良い。』
「!!ありがとうございますっ!」
やった。帰れるんだ。洸夜の待つところに。
幸せすぎて、涙が溢れる。洸夜と会ってから、良くも悪くも、泣いてばっかり。でも、そんな自分も、好きでいられる。洸夜のおかげで。
『では、これを持て。』
ゆっくり、上から何かが落ちてくる。出した手に乗っかったのは、金色の懐中時計。
「これは?」
『そなたの生命の時を刻むもの。今は、針が動いていないが、そなたが地界で目を覚ます時、再び動き始める。』
私の生命……。この懐中時計に、今まで私が生きてきた証が、刻まれてるんだ。
『我ができるのは、ここまで。あとは、そなたらの力次第だ。』
「え?どういう事ですか?」
『1度ここへ送られた者は、地界に戻るために自身の懐中時計を持って行く必要がある。そして、自分でやり遂げなければならない試練もある。今からの試練は、そなたならば、すぐに成し遂げられるだろう。』
そなたら……ってことは、誰かと一緒に協力するって事?でも、ここには私しかいないし。
『最後に1つ、忠告を。そなたのように、再び生を得た者には、さらなる試練の時が幾度もある。それを解決するにあたり、必要なものは、全て“愛”。“愛”を持って生きれば、幸福がそなたに与えられるだろう。』
「……愛…。」
『健闘を祈る。さらば、桑野乃々花。』