読み終わった頃には、俺の涙腺は崩壊していた。


「乃々花のバカ……」



こんなの、用意する必要ないって。乃々花は生きて戻ってくるんだから。



もう、乃々花よりも好きになる人なんていないよ。乃々花が最初で最後の俺の好きな人だよ。俺の幸せを願うんなら、俺と永遠に一緒に居てよ。それが、俺の唯一の願いだから。




「乃々花……早く手術終えて、目覚ませよ。」



でないと、俺、1週間くらいはずっと泣き続けるからな。そんなの、嫌だろ?




バカみたいに真っ直ぐで、純粋で、1人でなんでも抱え込んじゃう乃々花が、たまらなく愛おしい。そして、なによりも笑顔の乃々花が、大好きなんだ。




「デート、しような。」




乃々花の願い、全部叶えるよ。もっと、俺を頼って。乃々花の笑顔、これからも沢山見せて……。



乃々花が、今まで我慢した分、これからいろんなことを体験しないとな。で、俺がまた、乃々花にいろんなものを教えてあげる。




止めどなく溢れる涙が、手紙に落ちる。




乃々花……俺はもう、君以上の人には出会えないよ。




君の運命を変えたのは、俺じゃなくて、君だ。






2時間後————



手術室から出てきた深谷先生に、乃々花のお母さんが駆け寄る。



「先生、乃々花は……?」



「無事に、終えました。」




深谷先生の一言に、ホッと息を吐く。すごい緊張していたのがわかった。


ただ、歯切れの悪い先生の言い方が、ぞわっと背中を撫でた。




「ですが……手術は時間がギリギリで、乃々花さんの体力が持ったか、危うい状況です。今は、眠っているだけですが、今夜が山場でしょう。」



乃々花のお母さんが泣き崩れる。それを支える乃々花のお父さんと、衝撃を受けて固まっている翔さん。もちろん、俺も動けない。



今夜……乃々花の生死が決まる……。そう思うと、悪寒が身体中を巡る。



このまま、乃々花がいなくなるかも……。そんなことを考えたくないのに、脳にチラつく自分が嫌い。信じないといけないのに、 100%の希望を持てていない。



乃々花……俺は、どうしたらいい?乃々花が生きるためなら、なんだってする。だから、頑張って、耐え抜いて。