【said 洸夜】



「頑張ってね。」


「待ってるから。」


「さっさと治してこい。」


「絶対、俺の隣にずっといろよ。」





「うん、いってきます!」



ついに、手術の日になった。正直、なんとも言えない感情が胸を支配している。苦しい。


乃々花は笑顔で、手術に向かった。俺や乃々花のご家族も、乃々花の前では穏やかな顔だったが、今は………。



お母さんは、手や肩を震わせてる。お父さんは、そんなお母さんの肩を抱いてる。翔さんは、全く落ち着かないみたいで、ずっと歩き回ってる。俺も、うずくまってるんだが。



30%か……。乃々花と同じような人が10人いたら、3人しか生き残れないなんて。


世の中、残酷だ。乃々花が何か悪いことをしたのか?って聞きたくなる。絶対乃々花より俺の方がヤバい奴なのに、なんで乃々花なんだろう。



ぼやいても、ぼやいても、答えは出ない。



予定時間は、2時間。まだ10分も経ってないのに、落ち着かない。



何もできない自分が歯痒い。このまま、乃々花がいなくなるかもしれないって思うと、怖くてたまらない。


絶対成功する!って、心の底から思えない自分が情けない。



今は何を考えても、マイナスな方に傾く。



乃々花……。俺は、これからもお前の名前を呼びたい。隣で笑い合いたい。サッカーの話を聞いてほしい。たまに落ち込んでたら、慰めて。俺も、お前が甘えられるような懐の広い男になるから………。


他にも一緒にしたいこと、沢山あるんだよ。遊園地とか、水族館とか、放課後デートとか。いろんな所に行って、いろんな事を知って、お揃いのものとか買ったりして……。



普通のカレカノがするようなこと、全部しようよ。たまには、喧嘩とかで不満ぶつけあったりさ。




普通でいいから……普通がいいから……。乃々花にもっといろんな物を見せて、教えてあげたい。今流行ってる物を2人で堪能して……。乃々花に似合うものを選びたい。乃々花がどんなものが好きか知りたい。



今、乃々花が持ってる財布とかコップとかは、シンプルなのが多いから、人気の雑貨屋とかで、2人で選ぼう。



乃々花、早く手術成功させて、退院して、編入試験の勉強して、一緒に遊びに行こう。


俺が行きたいところにも、たっくさん連れ回すけど、その分乃々花の好きな事もしよう。





乃々花がいろんな“初めて”をこれから経験する時は、必ず隣に俺がいるから。




君の側に、いさせてくれ………。