”それとも”―――の後は聞けなかった。

だって彼女が居るのに『彼女?』だなんて聞けなかった。

自分の気持ちも彼の気持ちも、よく分からないのだから……。



「百合子こそ、俺の事、どう思ってんの?…毎日来てるのに、何とも思われてない?

……ただの友達?」



質問に質問で返してくるなんて、ズルイよ。



「友達でもないし…彼氏でもないし、こっちが聞きたいよっ!」

「……なら、今から彼女になってくれる?」

「…えっ…」



驚いたまま、唇が重ねられていた。



「いつまで待てばいい?…健全な高校生なんだけど…」



ちょ…ちょっと待て!

何で服に手をかけてんのよ?

バッチーンッ!

鈍い音が部屋に響く。勢い余って、思わず手の平で頬っぺたをぶってしまった。

「いってぇ…」

「…今日見たんだからっ、彼女と歩ってるところ。誰にでも手を出せるなんて思わないでっ!」



泣きたくないのに、涙が出て来た。

悔しかった。

二股なんて、遊ばれてるだけなんて、嫌だよ。



―――そうか、いつの間にか彼に恋してたんだ。

だからモヤモヤして胸が痛んで…。

素性も知らないくせに心の中には彼が住み着いていた。



「今日…?アレは彼女じゃないし、彼女なんて居ない。妹だよ、前話した里沙」