余命宣告を過ぎた僕。

棗過去side



「雑菌雑菌〜!」



「雑菌は来んな!」



棗「違うっ...雑菌じゃないッ...棗だもんッ」




名前のように雑菌雑菌と言われる



「雑菌の癖に口答えすんな!」




棗「そんな事言わないで!」



「雑菌が近寄ってくんな!」



「菌が移る〜!」



皆楽しそうにからかってきて僕から逃げる



毎日そんな学校生活だった



家に帰っても



棗「ママ、あのね。僕学校でねi」



ママ「うるさい!黙って!あんたのせいで今月もギリギリなの!」



棗「ごめんなさい...」



ママ「海唯、お金に余裕を持たせたいから塾辞めさせていい?」



海唯〈かい〉とは僕のお兄ちゃん。




海唯「うんいいよ。」



ママ「ありがとう。海唯はいい子ね」



ママがお兄ちゃんを抱きしめて頭を撫でる



棗「ママ、僕も...」




ママ「雑菌は黙ってなさい!」



棗「ごめんなさい。」



ママにはもう名前すら呼ばれなくなっていた。



ママ「海唯今度参観日でしょ?」



お兄ちゃん「うん」



ママ「ママ行くからね」



お兄ちゃん「ありがとう」



お兄ちゃんとママは笑いながらお話する



僕はただ立ち尽くして、笑えずに服の裾を握っている



ママとお兄ちゃんは笑えてなんで僕は笑えないの?



どうせ、参観日は僕の所にだけ来ないでお兄ちゃんの所だけいくんだろうな



ママはお兄ちゃんしか見てないから。



僕の事は一切見てくれない



昔は僕の事もちゃんと見てくれてた。人って直ぐにコロコロ変わるんだな。



この時初めて人が怖いと思った



時間はいやでも経つから直ぐに参観日の日が来た



先生「じゃぁ次棗くん」



棗「はい」



作文用紙を広げて読んでいく



棗「家族。僕は病気を持っています。その病気はなんの病気かわかりません。僕は長生き出来ないことを知っています。でも僕の家族が居るから長生きしたいと思います。ママは優しくてお料理が上手で、お兄ちゃんは勉強を教えてくれてパパは家族の為に沢山働いています。」



ママとお兄ちゃんは全部昔の事。



最初は素直に書いてたんだ。



でも、先生に嘘でもいいから替えなさいって言われた



棗「僕は家族が居るからッ...がんばれるしッ......辛くありませんッ.........」


全て自分の心と反対で嫌になって泣き出してしまう



棗「ヒクッ...僕は家族が大好きですッ...」



でも最後だけは本当だった。



あんな事言われても大好きでいるしかないんだ



涙を拭いながら自分の席に着いた



先生は泣く僕を無視してどんどん授業を進めていった



参観日の日は偶然、僕の誕生日だった。



8歳の誕生日だった



家に帰ってただいまと言うけど



誰も居なかった



テーブルの上には置き手紙一つ



海唯とパパで遠くに出かけてくる



そう短い文だった



棗「今日ッ...僕の誕生日なのにッ...」



誰からもおめでとうと言われない。


でもお兄ちゃんの誕生日は沢山言われてて



棗「酷いよッ...」




僕長く生きられない。こんなちっちゃな僕でもわかる



棗「どうしてッ......好きでいてくれなかったの!」



あと少しの命なのに、なんでなんで。



誰も居ない冷たい家で泣きじゃくった