「璃梨ちゃん、お帰り。今日は塾のテストの返却日だったわよね?見せて」


母親は、璃梨に向かって手のひらを差し向けた。

念入りにネイルアートが施してある。

一体誰に見せるつもりなのだ。

璃梨は黙ってカバンの中からプリントを五枚取り出し、母親が突き出している手のひらにそっと乗せた。

数学百点、現代文九十五点、化学九十八点、
英語百点、歴史九十九点。

誰がどう見ても、かなりの高得点だった。

しかし、母親は受け取った答案用紙を見ながら首を傾げて唸った。

その仕草にすら、美を意識しているようだ。


「どうして全部百点が取れないの?習った事しか出ないでしょう?」


なら自分も同じテストを受けてみればいい。

それでもし全教科満点が取れるのなら文句は
ない。

内心ではそんな風に思っていても、それを口に出さないのが璃梨だった。


「ごめんなさい・・・」


「まぁいいわ。でも、次は絶対に百点を取りなさい。わかったわね。これから、塾の日数
も増やしなさい。お父さんが帰ってきたら、報告しておきます」