美春の目の前に来た声の張本人は、タメ息混じりに言葉を発する。

「おい、佐々木」

その言葉に、目線だけを向けた美春。

顔を見て、ハッとするも、腰が抜けて立ち上がれない。

「っ、たく。世話のやけるやつだ」

そう言うなり、美春を軽々と持ち上げた。

「大丈夫か、佐々木?」
「…は、はい。すみません…三浦部長」

そう、その声の張本人は、このオフィスの部長を勤める三浦洋介部長。

「仕事が終わったのなら帰れ」
「…いえ、まだ途中で」

美春の言葉にタメ息をついた洋介。

「なら、さっさと済ませろ」

そう言うと、洋介は自分のデスクに戻るなり、書類に目をとおし始めた。