無理もない。

誰が見ても綺麗な美春だが、産まれて24年間、誰とも付き合ったことがない。

父親以外と、必要以上に会話をしたことすらない。

そんな美春が抱き締められて、困惑するのもいたしかないこと。

潤んだ瞳で美春は懇願するように貴史を見た。

その顔に、貴史はドキリとする。

『美しい』

とはこの事を言うのだろう。

いたずらしただけのつもりだった。

でも、それがきっかけで恋に落ちるなんて、貴史ですら、想像していなかった。



「何をしてる?就業時間はとっくに過ぎてるぞ」

その言葉で、二人はサッと離れた。

貴史は、自分のデスクからカバンを取ると、その人に頭を下げて、その場を去った。

美春はその場に放心状態。