『そんな知識は必要ない。昔、祖母が亡くなった時、俺は医師になるって決めた。その時は、不安もいっぱいで…でも、愛莉がずっと側にいて励まし続けてくれた。受験も大学も、そのおかげで頑張れたんだ。知識よりも優しさ…俺はそっちを選ぶ』


難しくて複雑な医学の世界に飛び込むことへの不安を、愛莉は優しい言葉で取り除いてくれた。


それが、どれほど力になっただろう。


今でも、ずっと…


そのことへの感謝は決して忘れていない。


『そんな…私は…瑞先生のことが好きなの。過去に縛られてあの人を想うなんて、それこそ馬鹿げてるわ。そんなのただの幻想よ。おままごとの世界の2人がそのまま大人になっただけ。現実的に医師を続けていくなら、お互いのために、あなたと私が結婚するのが1番じゃないの?』


鋭い眼光が、容赦なく俺に突き刺さる。


この激しい気性、俺には無性に重たく感じた。