『最近、引っ越してきた。愛莉は、ずっとここに住んでるのか?』


『あ、うん。仕事始めてからずっとここだよ。瑞は鎌倉のご実家から?』


その時、瑞の携帯が鳴った。


『はい、わかりました、すぐ行きます』


電話を切ると、


『悪い、ちょっと仕事。またな、愛莉』


とだけ言って、慌てて私の前から消え去ってしまった。


まるで嵐のように。


瑞も自転車だったな…


仕事場近いのかな?


今、何の仕事をしてるんだろう?


瑞の家は代々お医者さんで、鎌倉でかなり大きくて立派な総合病院を営んでる。


子どもの頃の瑞は、ずっとお医者さんにはならないって言ってた。


だけど、お祖母さんの死をきっかけに、医学部に入って。


あれから…


ちゃんとお医者さんになったのかな?


それとも、別の仕事に就いてるのかな。


それにしても…


数年ぶりに会った瑞は、本当に見違える程のイケメンになってた。


なのに、私は…


相変わらず、イケてない女子のまま。


瑞、呆れてるよね、きっと…