家に帰って、夕飯を済ませ、冷蔵庫から冷えたタルトをテーブルに置いた。

ひんやりと冷えていて、美味しそう〜。

フォークで、ゆっくりと切って、口に頬張る。

口の中にとろけたような、クリームの甘さと甘酸っさを感じた。

(うん、うん、このサクサクのタルト生地もたまらないんだよね〜)

至福の時間を堪能していたその時だった。

口の中で、何かがはじけたとの同時に

ボンっと音がして、40代過ぎくらいの男性が目の前に立っていた。

男の見た目は、薄い栗色の髪に淡いブルーの瞳。服装は、スーツ姿で1Rの部屋より外国の社交界の場に立っている方が似合いそうである。


1人暮らしらこの部屋には同居している人などいない。男性の人の知り合いも、彼氏もいないので、誰かが勝手に部屋に上がり込んでくるなんて、考えにくい。


なのに、どこから…。

「俺の魔法ちゃんとかかったかな。」

えっ、まっ、魔法って…??

「俺の味はどう?美味しいだろ。もっと、たっぷりと味わっていいんだよ。」

そう、男が言うと手が勝手に動きだし、口にいっぱいタルトを頬張る。

「っん、こっ、こんなに、入ら、ないっ…!やめてっ!」

口をもぐもぐ動かしながら、男に必死に訴えてる。

「うん、いっぱい食べれたね。えらいよ。」

そう微笑み、髪をゆっくりに撫でると、頬張ったからか、口元についていたクリームを指ですくい、ゆっくりと舐めとった。


「俺の理想通りの味だ。さぁ、そろそろ眠りに着くといい。新しい世界へと一緒に行こうか。」





何で勝手に手が…!まさか、本当に魔法が??