「それにね、全部が1等星みたいに輝けるわけじゃない。全部が1等星なら疲れてしまうよ。」
小さな光も必要なんだと言われて何だか納得した。
伯父の言葉が一つ一つストンと胸に落ちてくる。
「みんなが求める1等星よりも3等星4等星、時には6等星くらいの方がよほど心地よい時もある。」
デビュー作の光が強すぎてうまく書けなくなったと落ち込んだ。
下手になったんじゃないかと焦りを感じた。
しまいには、自分の実力じゃない偶然で運良く生み出せた作品だとさえ考えた。
だけど、その全てが早計だったと香織は思い知る。
「僕は君の描く世界が好きだ。だから、書くのを嫌いになっていないなら諦める理由を探さないで。」
作家にとってこれほど嬉しい言葉はない。
香織は今なら何だって書ける気がした。
作家は正解のない職業。
書き手が宇宙なら、生み出す星達には愛情と責任を持たなければならない。
いつか誰かに届く光だと信じて。
優しく笑う伯父に心からのありがとうを言った。
沢山売れるものじゃなくても良い、たとえ微かでも香織の空で確かに輝ける星を作ろうと初めて思えた。
「伯父さん、私先に帰る!」
駆け出した香織の背中はキラキラしてて伯父は“いってらっしゃい”とその背中に呟いた。
-fin-


