そんな事を考えているうちに、1人の青年が目の前に現れた。
火の光に照らされて、青年の髪の毛が茶色から青色に変わる。
「…レベッカ。レディックを…頼む」
「王!!」
しばし、時間が止まったような気がした。
思いをこらえるような短い叫びが聞こえた、と思ったら青年は突然走り出す。
走り出す体を、止める事はできなかった。


「レディック様…俺もです。…『この命・体滅びるまで主に仕える者』…。『我が名は『レベッカ・ラクロイム』』…」
さっきまでの幼さが、青年から抜けた。
1人の少年を火の中から抱き寄せ、慰めるように優しく話しかけている。
冷たい雨が、体を激しく打ち付けていた。
軽い寒気を覚える。
髪の毛が、肌にうっとうしく張り付いていた。
「…俺が、王だ」
隣を、風が通り抜けた。
薬品のきつい匂いが、鼻をつく。
「ザスクート…」
「ラーバン王、あれは第1王太子殿下です」
ザスクートの手が、剣を掴む。
「ザスクート、何を!?」
背後からしのびより、あっという間にさっきの薬品を使ったらしい。
王太子殿下と若き騎士は、その場に倒れこんだ。
「ラーバン王、王太子殿下を連れて帰りましょう。後々、役に立ってくださる」