兵士の肩越しに、ベルカの顔を盗み見る。
その顔は、灰で黒く薄汚れていた。
ベルカの瞳が、自分をとらえる。
そらせなかった。
「…ラーバン王!!」
聞こえないフリしか、できない。
「…どうしてですか!!なんで貴方が……」
泣いたようにも思えた。
ベルカは視線をそらし、うつむく。
1人の兵士が、残酷にも新たな火を放った。
部屋が、赤色に染まる。
何かに向かって伸ばした手を、ザスクートに握られた。
殺気を感じ、素早く腰の剣を抜き取る。
金属を交えるかん高い音が、耳をついた。
クリスタント王が、煙の中から現れる。
「…ラーバン王、ベルカは死にました!!『好きでした』と呟きながらです!!」
透き通った水色の瞳が、俺をとらえた。
涙であふれた瞳が、全てを物語る。
心のどこかで、ベルカの事があったのだ。
弱ったクリスタントの力は、どうにでもできた。
斬り捨てる。
クリスタント王の体が、地面に倒れた。
―――『好きでした』
ベルカ、過ちをおかしてしまってからでは、遅かったんだ。
時間は、もう戻らない。
悩んでいたのは、自分だけじゃなかったんだ。
身分の違いを、感じさせていたのは……俺。
全て、自分のせいなんだ。