背後でわざと大声を出し、ラーバンの歩みを止めてみる。
胸に突き刺さる、1言。
「ベルカ様が、ご結婚されたそうですよ」
的中。
ラーバンは、何かに突き当たったように急停止する。
「ラ・サズリック王国クリスタント・ラ・アンサー王。ベルカ様の結婚相手です」
「…クリスタント…王?」
『王』なのか?
身分の違いなど関係なく、結婚まで結びついたというのか?
目の前が、真っ暗になる。
吐き気がする。
今までの諦めが、情けなく思えた。
本能的な涙が、頬を流れ落ちた。
後悔が、悔しさを上回る。
ザスクートに向けた背中が、震えた。
「ベルカ…」
返事を返される事のないその名は、1度きりで途絶えた。

頭を、黒い感情がよぎる。
破滅に向かうしか、選択肢はなかった。
唇を噛み締めれば、鉄の味がするだけ。
当たり前の事だと、思いたい。