One s death -the last sword-

―恋人。
言葉を知ってはいるものの、理解しがたい言葉。
心に引っかかるものがあったが、深くは考えなかった。
「そういえば、今日はベルカ様を見なかったな」
「そうね。何か、物足りないわ」
女の方が、軽く笑う。
ラーバンの中に、満ちたりたものが広がった。
「ベルカ様は、ラ・サズリック王国の方なんでしょう?確か、カスクライ王国に、親戚の方をもつ」
「名のある貴族だよ。昔からのね」
あまり詳しい事は知らなかったが、王城を訪れる事ができるのは王族に近しい高い身分の貴族だけ。
しかも他国の王城ともなれば、自国でも高い身分なのだろう。
「ラーバン王と、とてもお似合いよね」
「滅多な事を言うなよ。誰かに聞かれたらどうする」
「誰もいないわ。召し使いの間じゃ、噂の種だし」
「まあ、あのラーバン王だもんな。美しい容姿をしていらっしゃるのに、女性の影も今まで全くなかった」
女性の影?
あってどうする?
ラーバンは興味深い2人の会話に、引き込まれていった。
ここでやめる事もできたのだ。
ラーブルの鳴く声で空を見上げると、耳に会話が素直に入ってくる。
…聞きたくない事を入ってこないようにする事は、難しい。