そっと瞳を開けると、もう太陽は沈みかけていた。
重い体を無理矢理起こし、ひんやりとした冷たい空気を存分に吸い込む。
扉の前にいた従者から水を受け取り、一気に喉の奥へと流しこんでいく。
口元を、一筋の水が伝い落ちる。
まだ若い、青色の瞳をした従者は半ばみとれるように、その光景を見つめていた。
目の前にいる人間は、男であり『王』であるというのに。
差し出されたグラスを受け取り、足早に扉の奥へと姿を消す。
そんな光景を見ながら、若き『王』はフンと鼻をならした。
カスクライ王国ラーバン・キャンクイール。
幼くして王である父を亡くし、わずか14歳で王位についた『金の王子』。
美しい水色の瞳に、輝く金色の髪の毛。
現在18歳の王は、埋もれるようなベッドから降り、大きく窓を開いた。
噴水の向こう側で、馬車が緩やかな丘を駆け降りていく。
―客が来たのか?
ラーバンは急いで正装に着替え、マントをはおりながら階段を滑り降りる。
「ラーバン王!!危ない…っ…」
遠い世界から、叫びが聞こえたような気がした。
体の奥が空洞になったように、一瞬で冷たくなる。
投げ出された、という今の状況がイマイチ理解できない。