「レディック様?」
顔を天に向けると、レベッカが笑みを含めて隣に座った。
「…寒くないですか?こんな所に座って」
「あー…」
俺が今座っているのは、道の上。
つまり、通りの煉瓦の上にいる。
すぐ近くに王城があり、あまり人が通らないからだ。
「どうしたんですか、レディック様。そんな気の抜けた顔して」
「…元々だよ、そんなの。あー…」
見上げた空には、雲が散らばっていた。
今だに、こんな綺麗な国にあんな戦争があったなんて信じられない。
もっと上手く訴えれば良かったという後悔と、行き場のない苛立ちが思考回路を停止させる。
どっちみち俺は、今回にかけていたのだから。
「あ、そういえばレディック様。なんで『マーク』を知っていたんですか」
「あー、『マーク』?知んねぇ…。何が『マーク』かも分からないし」
頬を冷たい風が通り抜けていく。
寒い事に変わりないのだが、冷静になるのには丁度いい。
首だけ上を向けている状態なので、レベッカがどんな表情をしているのか分からない。
「…『マーク』って言うのは、ラ・サズリック王国の王族に伝わるものです。昔1度だけ、レディック様は『マーク』をしるした事がありました」
「あー…」