「ラクトン貴様!!それは誰に対しての侮辱の言葉だ!!」
えっ、俺でしょう?
ラクトンと呼ばれた男は、今にも俺を殴り出しそうな殺気をおさえ、深く息を吐いた。
「…すみません、ラグアベール様。つい気持ちが高ぶって…」
「たとえどれだけ怒っても、国だけは侮辱するな!!『マーク』を侮辱すれば、王族を侮辱したという事になるぞ!!」
『マーク』って、何?
ラグアベール、と呼ばれた老人に下手に言葉を使い、これ以上嫌われたら困るので何も言えない。
それより、俺はどうなったの?
「ラグアベール様!!この者はどうするんですか」
俺は、声の方を振り返る。…ナタルだ。
背の高い大人に紛れて、必死に自分の存在を知らせようとしている。
ラグアベールがナタルを振り返ると、人々は声をおしころした。
「…決まっているだろう。今すぐ答えなど出せない。慎重に、話し合いを進めよう」
「待ってください!!俺は嘘なんてひとつも…」
もう、ラグアベールは俺なんか眼中にない。
人々が、俺に何とも言えないような視線をおくりながら、立ち去る。


信じる事はできるのに 信じさせる事は できない。