部屋に入ると、俺は吸われるようにソファーに倒れこんだ。
「…どうしたんです、レディック様」
俺の長いため息を聞き、レベッカは足を止めて俺に向きなおる。
「ちょっと考える事が多すぎて」
「頭脳明晰なのも考えものですね」
「馬鹿にすんな」
レベッカは軽く微笑み、隣の部屋に足を進めた。
俺にはもう、立ち止まる権利すらない。
立ち止まる事は、できない。
「レディック様、俺は少し外に出ますけど」
「…そんな元気ない」
「じゃあ、行ってきます」
ドアが閉まる音と共に、さらに体の力が抜け疲労感が押し寄せてくる。
南向きの窓からは夕日がもれて、部屋をオレンジ色に染めている。
窓の側には2つの質素なベッド。
間には王城を描いたと思われる大きな絵画が飾られていた。
それに背を向けるようにして西向きに、俺が今座っているソファーがある。
正面には数十冊の本が入った本棚と、また大きな絵画。
今度の絵は多分、ラ・サズリック王国の海岸沿いの村じゃないだろうか。
その絵画の右隣は、隣の部屋へと続くドア。
レベッカが開けた時見た限りでは、ここより一回り小さい部屋だと思われる。
俺は長いため息をつくと、大きくのびをして頬を叩いた。