空をあおぐと、視界のはしに小鳥が見えた。
ここは、カスクライ王国の中央に位置する王城。白煉瓦で覆われた広大な面積の素晴らしい城は、どこか懐かしさを覚えさせる。
今この城をおさめているのは、第52代王のラーバン・キャンクイールで、その威厳に満ちたまなざしは多数の国をふるえあがらせた。だが、実は愛すべき家族の前ではその水色の瞳をほそめ、王ではなく父親になるのだとか。
実際、自分には何も感じられないが。
そう、俺の名前はレディック・キャンクイール。
カスクライ王国第52代王ラーバン・キャンクイールの息子、カスクライ王国第1王太子殿下だ。
水色の小鳥は、カスクライ王国名物でラーバン王の瞳と似ている事から『ラーブル』と呼ばれている。『ラーブル』とは、ラーバン王が幼少時代呼ばれていたあだ名と聞いた。
今自分が立っているのは、南に向かう正門と城とにはさまれている庭園。中央にはとめどなく溢れ出す噴水があり、間隔をあけて円形に小さなモミの木が植えられている。冬になれば、祭好きな女性達がクリスマスシーズンに向けて、この殺風景な庭園もきらびやかな飾りによって美しく生まれ変わるだろう。