One s death -the last sword-

柔らかさが悪夢のように全体を駆けめぐる。
見ていられなかった。
兵士は数を増やし、広い王の私室はいっぱいになった。
中央で戦うのは、俺とレベッカ唯二人。
一体、どれ程剣を振るっただろう。
大分息が上がり、視界が白くぼやけていた。
この現実から、俺は逃げ出したかった。
剣を一直線に振れば、そこから日常に戻れる気がして、必死に剣を振る。
だけど、斬ったのは兵士。
本能的な涙が、冷たく頬を流れた。
多分、この現実から逃げられる方法があるのなら俺はどんな事をしても、その方法を知る事ができるならどんな事でもするだろう。

『死』さえ、今の俺にとっては遠い楽園。

「レディック様…聞こえますか」
共に背中を向けたレベッカから、呟くような声が聞こえた。向かってくる兵士を斬りながら、俺は静かに返事を返す。
「あぁ」
「俺が合図をしたら、南の窓から飛び降りてください。できるだけ、噴水の中に落ちるように…」
「はあ!?」
急に大声を出したせいか、一瞬兵士の剣が止まる。
その隙にも、レベッカは2人の兵士を続け様に斬っていく。
「それってそれって、俺だけ逃がすとかいう…」
「そんな馬鹿な。俺だって死にたくない」
「…あっそ」