One s death -the last sword-

唇を、無意識に噛みしめる。
「だから、私達はお前だけを連れ帰り全てを忘れさせた」
「忘れるはずがない」
今、俺は何を信じたらいいんだろう?
「お前は目覚めた時、全てを忘れていた」
カシャン、という剣を持ち直す音が、この広い部屋に響いた。
束の間の夢から、現実に戻される音。
「それからしばらくして、あの騎士が我が国にやってきた。少年だった騎士も、お前と同じ全てを忘れていた。だが騎士は、全てを思い出したようだ」
「…全…て?」
「レディック王!!」
扉を開ける音がしたかと思うと、次の瞬間には剣を交える音が響く。
一瞬で、勝敗な決まっていた。
次の瞬間にはレベッカの剣が斜めに振り降ろされ、兵士は倒れていた。
倒れた兵士の胸のあたりから、血が流れ出る。
血を見るのは、初めてじゃない。
当然ケガをした事も、傷付いた死ぬ寸前の兵士も何度か見た事がある。
「…レベッ……カ…」
だけど、レベッカが人を殺している事実から、俺は目をそらしたかった。
残酷なまでに、肉を斬る音と剣を交える金属音が淋しく聞こえる。
「レベッカ…」
気付いた時には、もう遅かった。
俺は剣を抜き、一人の兵士の肩を斬っていた。
途端に、うめき声と人間の体の