歯をたてると、甘い蜜が口の中に広がった。
「あんがと、おっちゃん!!」
手を上げて礼を返すと、店の主人の笑顔が返ってくる。
もう1度歯をたて、かじりながら歩いているとラグアベールに怒られそうで怖い。
一応優秀な補佐官だが、怒った時は見境なく怒るのだ。
その時、耳に声が入ってきた。
「兄ちゃん、いいもん差してるじゃん!!」
頭にはちまきをまき、地面に直に座った若者。
広げた布の上には、興味深いものが並べられていた。
「なーに、それ」
品定するように近付き、ひとつを手にとって見てみる。
異国のもののようだ。
「兄ちゃん、剣には自信あるようだね?」
「まあね。剣豪っつっても過言じゃないよ」
「それはそれは」
笑いながら、俺に向かって物を軽く投げてくる。
「これは?」
「異国のもんなんだけど、剣の手入れ用の布っつーの?普通のよりきめ細かいから、剣に傷つかないよ」
挑戦するような、心地よい笑み。
俺も同じような笑みを返し、しゃがんだ。
俺の剣は、正直傷だらけだ。
手入れしようとしても不器用だから、必ず傷をつけてしまう。
「買う?」
首を傾けて、品定してみる。
これ買ってかえったら、ラグアベールとかディットに怒られそう。