青い空が、どこまでも澄みきっていた。
誰もいない事を確認してから、地面に寝そべる。
思いっきり息を吐き出し、思いっきり息を吸うと幸福感でいっぱいになった。
暖かい春の風が、耳元をくすぐる。
大きな欠伸が、眠気を誘ってくる。
平和だった。
平和すぎて、暇なくらいだ。
いや、正直暇ではなかった。
城では、レベッカやラグアベールが俺がやるべき仕事をこなしていってくれてるし。
そしてディットは、俺を必死に探しているのだろう。
「…あーあ」
手を空に向けて伸ばし、大きく伸びをする。
腰のところで、剣がぶつかって音をたてた。
もう1度、欠伸をする。
涙を指先ですくうと、馬の蹄の音が地面から体に伝わった。
「やばっ!!」
勢いよく体をおこし、街に向かって走り出す。
後ろを振り返ると、俺がのってきた馬は捕らえられていた。
尊い犠牲だった。
さらば、友よ。
少し行くと歩き、人通りの多い通りに出た。
正体がバレないよう、フードをかぶる。
どこの店でも、威勢の良い声が飛び交っていた。
色々な店に声をかけ、ひやかしていると突然胸に重い物が投げられる。
「そこの若者。遠慮しないで持っていきな」
赤く熟した、果物。