そして2人の性格は驚く程違い、人懐こくいつでも満面の笑みを見せるのがロア。
あまり人と関わらず、滅多に笑わないのがセアだ。
「で、ロアとセアは何してるんだ。こんな所で椅子を出して」
「セアが出しました、スバッグと一緒に」
スバッグとは、専属のコックでロアとセアの遊び相手でもある、
「スバッグが?何で?」
「一緒にクッキーを作ったんです。…たくさん。これくらい」
2人で一緒に作ったクッキーの多さを認めさせようと、両手を精一杯広げた。
その動作が、とてつもなく可愛い。
2人は、横に下げた赤いバッグから白い紙袋を取り出し、俺とレベッカにひとつずつ渡してくれる。手に微かな温かみが伝わった。
「…クッキー?」
ロアは、顔を輝かせ口を大きく開ける。
その動作もとても可愛らしかったが、ゆっくり見る事もせず急いで紙袋を開けてロアの口に入れた。
甘い香りが、鼻をくすぐる。
「兄上も、レベッカも食べてください」
見ると、セアもレベッカからクッキーをもらっている。
全てが、愛しく思えた。
いずれは過去と呼ばれる、この瞬間を永遠に残したかった。何でもない日常が目に輝く。
―あの日までは。